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そのDX、ただの「IT化」になっていませんか? 本当のDXとは/業務改善コンサルタント 髙島卓也

2021.01.15

便利なITツールを導入することがDXだと思っている企業は多いもの。本当の意味でDXを進めていくためには、その前にさまざまな準備や方向性決めが必要になってきます。本当のDXとは何か。業務改善コンサルタントの髙島卓也氏が語るコラム第1回。

まず確認したい、「DX」の本当の意味

現在、「DX」という言葉が流行っています。その言葉に乗って、さまざまなITツールの提案を受け、検討したり導入したりしている会社は多いのではないでしょうか。

しかし、DXの本来の意味を理解していなければ、それはただの「IT化」になってしまっている可能性があります。

では、DXの本来の意味とは何でしょうか。

今回の新型コロナウイルスの感染拡大のように、大きく環境が変わると、企業は事業モデルや社内の環境を変化させなければなりません。そのためにITツールを導入し、その結果出てくるデータや情報を活用して、事業モデルや社内環境を変化させ続ける。それがDXです。

これは、何か新しい特別なことではありません。今までも、国や有識者が推奨していたことが、「DX」という言葉で表現されるようになって一般化しただけです。

しかし、現在、多くの中小企業がDXしようとして考えることや、「DX化しませんか?」と業者から提案されていることの大半は、ただの「ITツールの導入」になってしまっています。企業が抱えている問題や困り事に対して「このITツールの機能を使えば、御社の問題を解決できますよ」と言っているだけ。ただ、ITツールを提案しているに過ぎません。

もちろん、ITツールの導入は必要であり大事なことですが、それはあくまでも手段。それらのツールを使って何をするかが一番重要です。事業モデルをどのように変化させるか、ITツールを使ってどのように変化させていくかが本当のDXなのです。

しかし、実際にはそこまで考えてDXを進めている企業はあまりありません。タイムカードの集計が大変だから「クラウド勤怠を入れよう」とITツールを入れたり、在宅勤務を推進するためにITツールを入れたりしている企業がほとんどです。

そうではなく、もっと総括的に事業全体のことを考え、変化させていくためにITツールが必要なのであり、そこで得たデータをどのように活用するかが重要なのです。

事業変革の肝はデータにあり。

ただのIT化ならば、業務効率が上がるツールを選べばいいですが、DXを本気で考えているのであれば、どのように事業を変化させたいかを考えた上で、ITツールを導入するべきです。なぜなら、事業を検討していく上ではデータが不可欠だから。検討する上で必要となるデータを取得できるITツールを入れなければ意味がありません。

営業を例にあげると、新型コロナウイルスの発生により、今までと同じように訪問営業をするのが難しくなりました。その状況を踏まえて事業を変化させようと思っても、頭の中だけで思いつくアイデアには限界があります。指標となるものがないからです。その指標となるのは感情や感覚ではなく、あくまでもデータです。

例えば、対面とオンラインでの商談回数をそれぞれ記録していくと、「成約率がそれぞれ何%で、どちらの方がより成果が出る」など、データで比較ができます。そうすることで、「やはり、対面での商談の方が自社には合う」といったことが見えてくるかもしれません。また、「対面の方が成約率は高いけれど、ホームページからの問い合わせやオンライン商談の成約率を上げていくには何が足りないのだろうか」といった分析をしていく指標にもなります。

今後の事業としての進めていきたい方向性が決まっていれば、それを実現させるために何が足りないのか、どうすればその足りない部分を埋めることができるのかを考えることができる。そのためにもデータが必要になるのです。

ただ、実際には「まずITツールを入れてみた」という企業も多いでしょう。そうであれば、「ITツールを入れた結果、データが出てきたからそれを活用しよう」といった流れでも良いと思います。一番良くないのは、ITツールは入れたけれど、そこで得たデータを全く使っていないケース。業務負荷を下げるためだけにITツールを入れるのは、DXとは言えません。

何をするべきかが見えれば、必要なものが見えてきます。今後の事業モデルについて考えてみて、初めて「このデータが足りない」ということに気が付くはずです。ITツールの導入が先になってしまってはいけません。今、導入を検討中の企業は、ぜひそこを一度見直してみてください。

「DX」を進める上で重要なのは「人」

「ITツールを入れることでデータが得られて、それを元に事業を変化させていくのがDX」とお話ししてきました。しかし、DXに置いて一番重要なのは“人”です。データを見て、何をどのように生かすかを判断するのは、今はまだ人だからです。

大企業であれば、データを分析するためのツールを作ったり、AIを導入したりといったこともできるかもしれませんが、中小企業ではそこまでのお金を掛けられません。そのため、やはり人がデータを見て分析し、判断していくことになります。

しかし、中小企業にはそこまでできる人材はなかなかいません。できているつもりでも、実際には適切な判断が下せる人がいない企業の方が多いのではないでしょうか。

そうなった場合、社内で、事業変化につながるようなデータ分析をできる人がいないのであれば、社外の方にお願いするのも有効な選択肢の一つです。できる人間をわざわざ雇用するのではなく、出して欲しい成果に対して報酬を払う。これも、DXを進めていく上でポイントとなる考え方です。

今までは、社外の人を入れるとなると、会議のたびに会社に来てもらわないといけませんでした。しかし、会議もオンライン化していることで、社外の方にも格段に参加してもらいやすい状況になっています。これを生かさない手はありません。

ただ、社外の人に適切に分析して答えてもらうには、その分析をするためのデータを揃えることも必要です。事業変化のために必要なデータを揃える。または、「どのようなデータが必要か」といったところから、外部の方に相談しながらデータ分析の協力を仰ぐ。そういったことを取り入れていくのもDXの一つと言えるでしょう。

「DX」を進めることで、変化し続けられる企業に

このように、DXは世間の状況の変化に合わせて事業モデルや社内環境を変えていくものですが、最終的な目的は、ずっと生き残れる会社にしていくことです。

成功している企業は、どこも変化しています。例えばトヨタ自動車株式会社。トヨタの車は、常に変化しています。エコカーや電気自動車が出てきて、現在は自動運転を実現させようとしています。もし、トヨタが過去の売上や商品に満足していたら、今のトヨタはないでしょう。どんな企業であっても成長していくべきですし、時代に合わせて変化していくことは大切です。それがない企業には、先が見えません。

ですから、DXを進めていく場合には、経営者が「事業モデルを変化させる」というポイントをしっかり押さえて指示を出すことが重要です。そうでなければ、指示された側は何のためにIT化するかが見えてこないので、ただ生産性を上げるためにITツールの導入を行なってしまいます。

「IT化」や「DX」といった言葉に惑わされずに、事業をどうしていきたいかからまずは考えると、「最適なITツールは何か」「どのようにそのツールを活用していけばいいか」が、きっと見えてきます。そして、難しいと感じた場合は、柔軟に外部の力を取り入れましょう。生き残れる会社になるために、本当の意味でのDX化をぜひ推し進めてください。


Profile

業務改善コンサルタント
髙島卓也

長崎県波佐見町出身。九州の大手税理士法人や事業再生コンサル企業を経て2017年に株式会社ワクフリ設立。中小企業の業務効率化や創業におけるITツール活用支援に特化し、経営のアドバイスを行う。全国の商工会議所や自治体とも連携、業務提携を行い、中小企業へのクラウドサービス普及に努める。クラウド活用・業務改善のプロとしてメディア出演も多数。