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DXのストッパーは50代管理職?今、本当に変わるべきものとは/コンサルタント 廣瀬隆彦

2021.01.29

すっかり定着した「DX」という言葉。社内でも「DX化を進めよう!」という声が上がっている会社も多いはずです。一方で、社内にいる「あの人」がネックになってDX化が進まないという現象も起きているのではないでしょうか。DXの本質とは何か。コンサルタントの廣瀬隆彦氏が語ります。

DXをスムーズに進めるキーマンは、50代管理職

社内のDXがうまく進んでいない場合、その理由の大半は「人」にあります。私の経験上、50代の経営層や管理職の方々が原因になっているケースがよくあります。もし、あなたが50代だったら「心外だ!」と感じるかもしれませんが、ぜひ最後まで読んでみてください。

中小企業の多くは、50代の人が部長以上の経営層を占めています。その方々が入社した当時の日本企業にとっては、「会社が指示することを確実に遂行してくれる人」が必要な人材であり、評価すべき人材でした。そのため、その世代の方々は、「言われたことに着実に応える」仕事のスタイルが身についています。また、トップが号令を出して、みんなで一つの目標に向かって邁進することが、日本全体が長年培ってきた“成功パターン”でもありました。

そういった経験をしている方々は、無意識のうちに仕事の仕方としてルーティンワークが身についており、「企業の伝統を守る人」になっていることが多いです。もちろんそうではない人もいますが、「今更新しいことを取り入れるのは面倒だ」と内心感じている方も少なくないのではないでしょうか。

そういった「変化を好まない50代以上の方々」が、DXを進める際にストッパーになってしまっていることが多々あるのです。

しかし、世の中は、IoTや高速ネットワーク(5G)が登場したことで、第4次産業革命を迎えました。5Gが一般化したら、ビジネスのあり方はさらに変わってくるでしょう。加えて、新型コロナウィルスの感染拡大により、1年前までは誰も想像しなかった状況に陥っています。今までの経験則では太刀打ちできない時代がやってきたのです。

“戦略”が通用しない時代の到来

現在の状況を、的確に表している言葉があります。

戦略は死んだのである。

『コーポレート·トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』(文藝春秋)より

これは、日本航空株式会社(JAL)の再生などにも携わってきた冨山和彦氏の言葉です。長年、戦略を立て、事業再生を推し進めてきた彼がそのように言っているのです。

この言葉の意図は、「戦略を丁寧に丁寧に積み上げてから、やっと実行するような時代ではなくなった」ということだと私は捉えています。きっと、新型コロナウイルスが流行したことで、せっかく立てた戦略が台無しになってしまった会社もたくさんあったのではないでしょうか。

今後も、新型コロナウイルスに限らず、人々の暮らしを一変させるツール……例えばスマートフォンのようなものが、多くの業界で突然登場するかもしれません。それくらい、変化の早い時代になりました。

今の時代のスピードに合わせるには、その時その時に柔軟に判断していくしかありません。「トライしてみてどうだったか」というPDCAを早いスピードで繰り返していくことが必要です。

しかし、そういった判断をしていく上で、大きな決定権を持つ管理職や経営層が変化を億劫がっていては、時代についていけません。

リモートワークが進まないのは、企業の怠慢

そのわかりやすい例が、リモートワークの導入です。2021年1月に、再び11都府県で緊急事態宣言が出されました。それに伴って、国は、「首都圏のリモートワーク率70%を目指す」と表明しています。

しかし、2020年11月18日から28日にかけて、パーソナル総研が個人に対して行った調査で「現在、リモートワークを導入している」と答えた人は、わずか25%でした。それを一気に70%までに押し上げるのは、かなり難しいことではないでしょうか。

すべての業種がリモートワークをすることは不可能だとしても、2020年秋の時点でリモートワーク率が25%というのは、企業側の怠慢とも言える状態です。おそらく、新型コロナウイルスが少し落ち着いた2020年の夏以降、リモートワークを取りやめて通常の出勤に切り替えた企業も多いのでしょう。

もちろん、前回の緊急事態宣言で直面した状況を重くみて、リモートワークができる環境作りを進めた会社もあります。しかし、70%を満たすほどの会社ができているかというと、はなはだ疑問です。

「リモートワークだと、社員がちゃんと仕事しているかどうか判断できないから」という意見が多いのも、リモートワークが進まない理由の一つではないでしょうか。しかし、管理職がそんな意識だと、いつまでもリモートワークの整備は進みません。

もし、「新型コロナウイルスさえ収まったら、リモートワークをする必要がない」と思っているなら、それは大きな間違いです。同業他社がきちんと整備を進めて進化していたら、採用面でも業績の面でも敵わなくなってしまいます。

そう考えると、決定権のある重要なポストにいる方々…主に50代以降の方々が「リモートワークのできる環境作りを進めるんだ」と旗を振らなければなりません。別に、自分で進める必要はありません。わかる人、得意な人に任せてしまえばいいのです。

ただ、「わからないから」と無意識のうちにブロックしてしまってはないかを考えてみてください。自分の物差しだけで判断していると、これからの不確実な世の中に対応できません。

DXをはじめ、新しい物事や考え方を理解できるかどうかは別として、受け入れる姿勢を持つ必要はあります。同時に、リーダーシップのあり方も、これまでのような「みんなを引っ張っていくリーダーシップ」ではなく、若い人たちが取り組もうとしていることを「後押ししてあげる・支えてあげる」ようなリーダーシップが求められます。

これまでの経験では正解を出してあげられないことが、これからはどんどん起きてくるはずです。その時に、わからないなりに「一緒に考えるスタンス」が必要になってきます。

より幅の広い知見を取り入れて、変化に対応し続けられる企業へ

このように言うと、「新しいもの」や「若い世代の意見」ばかりが正しいようにも聞こえるかもしれませんが、決してそういう意味ではありません。「衆知」を大事にするべきだ、という話です。この「衆知」は、故·松下幸之助さんが好んだ言葉です。

「衆知」とは「多くの人々の知恵」という意味です。人一人が触れられる情報には限界があります。だからこそ、いろいろな価値観の人の意見を集めた方が良い。若い人に限らず、外国籍の方や高齢者、異業種、競合他社など、いろいろな立場の人の知を集合させる方が、今の時代にあった解決策が見つかる可能性が高まります。

誰も正解を持っていない時代だからこそ、自分だけの知識や経験、アイデアに頼るには限界があります。幅広い意見を取り入れた方が、きっと良いアウトプットができるはず。ですから、経営に関わっている50代以上の方々がさまざまな価値観を受け入れて、時代にあったベストに向かう必要があるのです。

50代以上の方々を例に挙げましたが、もちろんその方々だけの問題ではありません。例えば、稟議がおりるのに何週間もかかっている会社はないでしょうか? 「やっと稟議がおりたと思ったら、マーケットの状況が変わっていた」なんてことも十分にあり得ます。そういった会社は、リーダーの判断で進められる範囲を広げるなど、どこまで稟議を必要とするかを見直した方が良いでしょう。

不要な作業が入った業務フローになっていないかどうかも要チェックです。今は、いろいろなツールがありますから、より効率よく進められる方法はないか、時々見直すことも大事です。また、リモートワークを推し進めるには、マネジメントや評価の仕方も、これまでとは変えていく必要があるでしょう。

このように、DXは、あくまでも会社や会社のあり方を変えていくための“手段”です。DXをすること自体が目的になってはなりません。そして、何より、「人」が変わらないと、会社は変わりません。

この記事を読んだ方は、ポジションや年齢に関わらず、無意識に新しいものや変化をブロックしていないかぜひ振り返ってみてください。そして、あなたが経営者なのであれば、50代以上の方々に「これまでの通念や手法は一旦置いておいて、さまざまな世代の意見を吸い上げて、それを実現するために支援してあげるマネジメントをしてほしい」と、ぜひ伝えてあげてください。

そして、このことは若い世代の方々にも無関係ではありません。進化に終わりがない以上、私たちは変わり続けなければならないのですから。


Profile

コンサルタント/ディレクター
廣瀬隆彦

CX Value Lab株式会社 代表取締役CEO。愛知県名古屋市出身、福岡県糸島市在住。現エイベックス株式会社入社、法人営業、安室奈美恵などの販売促進担当、直販ECサイトの責任者などを経て2009年に福岡へ移住。グローバルレストランチェーンのマーケティングを担当したのち、2018年7月に株式会社メルカリへ入社。組織組成、マネジメント、リーダー育成、KPIやプロセス設計などに従事。2020年3月 CX Value Lab株式会社を設立。セミナーやイベントの司会・モデレーターとしても活躍。グロービス経営大学院で経営学修士(MBA)を取得し、TOP5%の成績優秀修了者として卒業している。