解決市場 DX&Solution 変革を担うビジネスリーダーの解決市場 BUSINESS ONLINE

メニュー

DX実現のために、経営者が持つべきマインドは/業務改善コンサルタント 髙島卓也

2021.02.18

便利なITツールを導入することがDXだと思っている企業は多いもの。本当の意味でDXを進めていくためには、その前にさまざまな準備が必要になってきます。本当のDXとは何か。業務改善コンサルタントの髙島卓也氏が語るコラム第2回。

DXする上で、最初に取り組むべきは「業務整理」

第1回のコラムでは、「DXは、何のためにするのか方向性を決めることが大切」と話しました。今回は、実際にDXを進めていく上で必要なことについてご説明します。

会社の方向性を決めた後は、現在の会社や現場の状況、業務フローなどを可視化して、現状を把握する必要があります。なぜならば、そうすることで初めて、目指すべきDXの姿に対して「何が足りないのか」が見えてくるからです。

この作業をきちんと行わないと、スタッフがどのように業務を進めているかが見えません。そのままだと、改善すべき点やIT化しなければならない工程、データをためることができるポイントなどがわからないのです。

経営者や管理職の方は、スタッフが何をしているかはわかっています。例えば、営業であればお客様を獲得してきて、売上を立て、請求書や見積書、契約書などを作っていること。バックオフィスであれば、総務や経理の人が、全員の勤怠を集計して給与を計算していることなどは知っています。

しかし、業務整理を行う上では、もっと細かく書き出していかなければなりません。どのソフトを使って、何を打ち込んで、誰がチェックして、何と何を照らし合わせて、どこに送っているのか。そこまで細かく洗い出して初めて、「どこに課題があるか」「どの工程を取り除けば効率が良くなるのか」などがわかるのです。

業務整理は段階を追って、丁寧に実施

業務整理には、次の4つの段階があります。

①現場のスタッフがどのような作業を行っているかを整理することで、現状の業務を可視化する。
②「どこに問題があるか」「どの工程を取り除けば効率良くなるのか」などが見えてくる。
③属人化しているものがないかが見えてくる。
④IT化できそうな部分がわかってくる。

これら4つを見据えることができて、ようやく業務フローを改善する段階に入ります。具体的にツールを導入し、IT化するのは最後です。また、会社が目指す姿によって、改善すべきフローも変わってくるので、そこを押さえて組み立てなければ最適な状態を作り出すことはできません。

逆に言うと、この4段階を踏まえて業務整理を行い、改善フローまで作り上げておけば、本当に必要なITツールが何なのか、どのタイミングでどのITツールを使えば良いかもわかります。そこがわかるようになれば、マニュアルやルールなども作れるようになります。だからこそ、最初の業務整理が肝心なのです。

しかし、自社の人間で業務整理を行うのは大変です。同じ会社の人が、何の作業をどのように行っているかを根掘り葉掘り聞くのは聞きづらいし、話しづらいもの。聞く人と聞かれる人が上司と部下の関係だと、そこに上下関係が加わってしまうし、相手が「上司だから/部下だから」こそ話しづらいこともあります。無理に聞き出そうとすると不和が発生する可能性もあります。

社内のスタッフで行うなら、コミュニケーションスキルが高く、業務フローを構築できるような人が良いでしょう。しかし、一般的な企業にはなかなかそういう人はいません。その場合は、できれば社外の方にお願いしたほうがいいと思います。専門家に外注する場合も、会社の事業モデルやどんな人が働いているかなどをきちんと理解した上で進めてくれる人を選ぶようにしましょう。

また、自社で行うにせよ、専門家に頼むにせよ、今まで取り組んできていることを否定してはいけません。たとえアナログな作業であろうと、長年きちんと行ってきたから今がある。DXはこれまでのことを否定するのではなく、「現在はこのように変化してきているから、デジタル化していかないといけない。だから、このツールを使いましょう」と提案するに過ぎないのです。

そう伝えた時に協力してくれる人は、会社の「これから」を考えてくれている人です。協力してくれない人は、自分のことしか考えていない可能性があります。ただ、変化に前向きではない人も、単に「わからないからやりたくない」「知らないからできない」だけということも多いです。その「わからない」を全部埋めてあげた上で、DX を進めてくことが大切です。

DXで利益が出たら、スタッフに必ず還元を

業務整理を行う1番の理由は、業務を整理せずにデータの取得を目的にIT化すると、単純に作業が増えるからです。

DXといっても、実際に行うのはあくまでも「人」です。スタッフはみんな、今より面倒になるのは嫌なもの。給料が上がるわけでもないのに、やらなければならないことだけが増えるのであれば、前向きになれなくて当たり前です。いくら経営者が大層な目的を掲げてDXを進めようとしても、スタッフは自分たちにメリットがないと動きません。

ベンチャー企業なら、「目標に向かって頑張ろう」でもいいかもしれません。しかし、中小企業で働いてきた人たちは、毎日の仕事をこなして給料をもらう生活に慣れています。そういった方々に動いてもらわなければならないのだということを、踏まえておく必要はあります。

スタッフにとって、DXを進めていくメリットは大きく2つです。1つは、今より仕事が楽になること。そしてもう1つは、DXすることで今後生産性が上がったら、給与のアップをしてもらえること。自分の利益に紐づくと思えるからこそ、面倒なDXも頑張れるのです。

そのため、経営者のみなさんには、DXを進める上では「スタッフの生活をもっと良くしてあげたい」という考えをぜひ持っていただきたいですね。なぜならば、収益をアップするためにスタッフは業務整理をして新しいツールの使い方を覚えるのですから、そこに報いなければなりません。「利益が出ても経営者の懐に入るだけ」と思われたら、誰も協力してくれません。

利益が出たらスタッフに還元していくことを、きちんと約束して進めていく必要がありますし、実現した際には有言実行しなければなりません。会社が目指すものやスタッフのことを考えなければ、DXはできないんです。

改善に前向きな社内文化の醸成と協力度が評価される制度づくりを

業務整理やIT化は、あくまでも改善のための手段であり、一番大事なのは組織づくりです。改善にみんなで取り組もうとする意識や、無駄を無くそうとする姿勢は、社内文化に他なりません。

社内文化を育てていくのが一番大事で、それをできるのは経営者や社内の人間だけです。ですから経営陣は、DXや業務整理の具体的な方法は知らなくてもいいのですが、「こういう会社にしていきたい」「DXすることで業績をアップして、みんなの暮らしを良くしたい」といった思いは伝えなければなりません。それが、経営者としての大事な勤めです。

また、事業は一人で行っているわけではないため、単に「ITツールを入れたから、みんな使ってね」ではなく、担当スタッフが問題なく業務を行えるかを判断するのが重要です。例えば「このボタンを押すだけでいい」としても、「押し忘れてしまったらどうするか」「押し忘れないようにするためにはどうすればいいか」も、考える必要があります。

ボタンを押さないと次の作業に進めないようにするのも1つの方法ですが、ボタンを押すこと自体が人事評価につながるような仕組みにするのもいいでしょう。「ボタンを毎朝押しているかどうかをボーナスに反映させます」と言われたら、みんな押すようになる。そういった仕掛けも必要です。

DXをするのは、あくまでも人。ただツールを導入すれば完成ではありません。人を動かすにはどうするべきかを踏まえて、DXを進めていっていただければと思います。


Profile

業務改善コンサルタント
髙島卓也

長崎県波佐見町出身。九州の大手税理士法人や事業再生コンサル企業を経て2017年に株式会社ワクフリ設立。中小企業の業務効率化や創業におけるITツール活用支援に特化し、経営のアドバイスを行う。全国の商工会議所や自治体とも連携、業務提携を行い、中小企業へのクラウドサービス普及に努める。クラウド活用・業務改善のプロとしてメディア出演も多数。