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値段や高性能な機能に惑わされない! ITツールの正しい選び方/業務改善コンサルタント 髙島卓也

2021.03.17

ITツールの導入を考えた際に、「似たようなツールがあって選べない」「どのツールが自社に必要なのか分からない」と迷ってしまう方も多いはず。そうならないためには、どうしたら良いのか。業務改善コンサルタントの髙島卓也氏が語るコラム、最終回です。

必要なITツールを検討するために行うべきステップ

これまでのコラムで、「自社の事業をこの先どうするか決めましょう」(第1回コラム参照)「業務改善をしましょう」(第2回コラム参照)とお話ししてきました。それを踏まえてITツールの選定・導入に向けた手順を整理すると、以下のようになります。

  1. ① 「事業をどうしていきたいか」という目的(未来図)を決める。
  2. ② 現在の業務フローを確認し、現状を明確化する(業務整理)。
  3. ③ ①と②の差をはっきりさせる。
  4. ④ 未来図と現状の差を埋めるためにはどうしたらいいか、IT化をするためには何をしないといけないかをタスクに起こしていく。
  5. ⑤ ④をもとに、改善フローを作る。
  6. ⑥ 改善フローができれば、ITツールの必要な機能がはっきりするので、見合うツールを選定・導入する。

DXは、「目的」ではなく「手段」です。「5年後にはこんな会社にする」といった未来図を叶えるためにITツールを取り入れていきます。ですから、まずは経営者が5年後の未来図を作らなければなりません。5年後にその姿になっているためには、4年後にはこうなっていないといけない、3年後にはここまでできていないといけない……と逆算していくことで、「今何をするべきか」が見えてきます。

その際に、もう一つ重要になるのが「現状の把握」で、そのために行うのが業務整理です。未来図が決まり、現状が明確になることで初めて、その間にある差が明確になります。その差を埋めるために、「現在の業務にどのような改善が必要か」「IT化が必要な部分はどこか」などを考え、タスクに起こしていきます。

現在の業務フローの中から、IT化に合わない部分を変えたり不要な工程を省いたりすることで、その業務に相応しい改善フローが出来上がります。ここまでできて、ようやくその会社の業務に必要なITツールの機能がわかるのです。

逆に言うと、事業の未来図やビジョンが定まっていないと、それを実現するための手段も改善の方法も決まりません。ITツールは、あくまでも事業の未来図を実現するために導入するものです。そのために必要な機能を搭載したツールを選ぶ必要があります。

ツールの候補が決まったら、検証を実施

事業の未来図とそのための改善フローが決まったら、ようやくITツールの選定に入ります。とはいえ、世の中にITツールは本当に多いもの。ここまで目的を絞り込んだとしても、2〜3種類は候補に挙がると思うので、それらのツールできちんと改善フローが回るのかを検証する必要があります。

単純に、フローを回していく上で必要な作業ができるかどうかを見ていくだけであれば、1カ月程度で判断がつくと思います。企業の規模にもよりますが、弊社の場合は社員数が多くないので、決め打ちで一旦導入してみて課題が出てきたら考えるスタイルを取っています。しかし、大手企業であれば、使用者数が多くスイッチングコストがかかるので、試しに導入してみるのが難しい場合もあるでしょう。その場合は、検証チームを作って検証してから導入するか、小規模な部署でまずは使ってみるのがおすすめです。

また、重要度が高いシステムを導入する場合は、会社の規模に関わらず事前に検証した方が良いでしょう。例えば、導入したのが勤怠システムであれば、うまく作動しなくても出勤時間と退勤時間をメモしておけば済みます。しかし、基幹システムの場合はそうはいきません。検証せずに導入して「顧客データがバラバラになってしまった」「売上がどうなったかわからない」などのトラブルが起きると仕事を進められなくなってしまいます。事業の根幹に関わるシステムを導入する場合は慎重に進める必要があります。

ツール導入後は、ルールを決めて業務を標準化

ITツールを導入したら、「この業務はこの手順で行う」というルールを決めましょう。実は、この「ルールを決める」のが重要なポイントです。なぜなら、ルールを決めなければ、いくら有能なツールを入れても意味がないからです。

例えば、営業のフローに「クライアントからヒアリングした内容はメモする」といったフローがあったとします。しかし、それだけではクライアントから聞いたことをノートに書く人もいれば、自分のパソコンのメモ機能に書く人もいるでしょう。それでは、本人にしか情報を見ることができません。そういったことが積み重なると、業務が属人化してしまいます。ですから、「クライアントからヒアリングした情報は、このツールのこの欄に記入すること」といった具体的なルールまで決める必要があります。

ルールが決まっていなければ、いくら良いITツールを導入してもそのツールを使う人・使わない人が必ず出てきます。しかし、ルールがあれば、きちんとITツールを使って会社に貢献している人を評価してあげれば良いのです。また、ルールを決めることで業務の標準化ができるので、「この業務にはどの程度の時間がかかるのか」といった測定もできるようになります。そうなったら、作業時間を評価の一つにしてもいいでしょう。

このように、ルールを決めることが業務の標準化につながり、評価にも直結してきます。そうすることで、結果的に生産性も上がっていくのです。

結局、一番重要なのは「どんな会社にしていきたいか」

このように、ITツールの導入に関しても「どんな会社にしていきたいか」を決めることで、さまざまなことが明確になります。目指す売上や利益がどの程度で、将来的にはスタッフが何人くらいになって、拠点が何個になっていてなどが定まると、ツールの導入に必要な予算もわかってきます。また、似たようなツールが複数あった時でも、適したツールをきちんと選べるようになります。

例えば、AとB、2つのツールがあるとします。どちらもやりたいことに対しての機能は満たしているとして、Aは高性能でその分導入価格も高い。Bは最低限の機能だけれども、価格はAよりも安い。この場合、どちらも目的のラインは満たしているわけですから、安いBで良い、と判断できます。こういった基準がないと、高くてもなんとなく高性能のものを選んだ方が良いように感じてしまう人も多いものです。しかし、目的がはっきりしていたら、無闇に高性能なものを入れることはありません。

さらに言うと、改善ツールにかける予算が高いか・安いかもわかってきます。例えば、DXすることで将来的に数千万円の売上アップになると見越しているのであれば、今改善に掛かる数十万円は高いでしょうか?数千万円を得るために必要なのであれば、決して高くはないはず。「実現したい姿」を基準にすれば、答えも明確になります。

事業の未来図を決めることは、経営者の役目です。しかし、経営者が目的さえはっきり決められるのであれば、そこから先は人に任せても構いません。目的を達成するために必要な人材や予算もわかってきますから、今自分たちが必要とする人材が入ってくるようにもなります。採用の生産性が上がるので、結果的にいい会社になっていくでしょう。

結局、ITツールの選定も含め、DXを進める上で一番重要なことは「これからどのような会社にしていくか」を決めることです。DXはIT環境を作ることではありません。環境づくりをしたその先の運用で起きることをDXというのです。ですから、まずDXするためのスタートラインに立つには、IT化した業務をきちんと運用できる状況まで持っていかなければなりません。きちんと環境を整えて、DXに取り組めるよう頑張ってください。


Profile

業務改善コンサルタント
髙島卓也

長崎県波佐見町出身。九州の大手税理士法人や事業再生コンサル企業を経て2017年に株式会社ワクフリ設立。中小企業の業務効率化や創業におけるITツール活用支援に特化し、経営のアドバイスを行う。全国の商工会議所や自治体とも連携、業務提携を行い、中小企業へのクラウドサービス普及に努める。クラウド活用・業務改善のプロとしてメディア出演も多数。